全日本軟式野球連盟(JSBB)の公認学童コーチ養成講習会に先ごろ参加しました。
あらためて、小学生に野球を教えることの難しさ、責任の重さを感じました。同時に、コーチとしてのやりがい、楽しさも感じることができ、今回の講習は非常に有意義なものでした。今後の野球指導に大いに活かすことができると思います。
以下は、連盟に提出した論文(感想文?)です。
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正しい指導法と医学知識
今回の講習すべてが参考となったが、あえて挙げるとすれば以下の三つである。
学童野球の指導で以前より難しいと感じていた動作が投動作と捕球動作である。私自身、投げ方や捕り方を体系立てて指導頂いた記憶がなく、練習の中で感覚で覚えてきたからだ。今回の講習では、肘を肩の高さまで上げるための様々な練習方法を教えて頂いた。特に印象に残ったのが2つある。1つは、ラジオ体操のように腕を外から内に回し、肘が肩の高さまで上がったタイミングで投げる、という練習である。もう1つはボールを持った手を帽子の後ろにつけてから投げるという練習である。これらであれば子供たちが自然に肘をあげることができるだろう。正しい投動作は怪我の予防につながる。その点で非常に参考となった。
また、前後に歩きながらのキャッチボール、ラグビーのパス練習のように横に並んで歩きながらのキャッチボールという練習方法も教えて頂いた。動きの中でキャッチボールを行うことは試合の中で重要な要素である。
捕球動作の前段の話しとして、今の子供たちは黒目を動かさず顔全体を動かしてボールを追う子が多い、という話しがあった。これは私自身も指導の中で感じていたことであった。顔全体を動かしてボールだけに集中してしまうと他の状況、特にランナーやカットマンなどに気を配れなくなってしまう。そのための練習として、顔を正面に向いたまま動かさず簡単なフライ捕球をする、というのを教えて頂いた。また、今回の講師ではないが県立相模原高校の佐相監督も自著の中で黒目を動かすための練習方法を紹介されていた。
これらの練習について、自チームで話し合い、積極的に練習に取り入れていきたい。
このカリキュラム担当の大石滋昭氏の講習を楽しみにしていた。なぜなら私が学童野球のコーチとなって初めて読んだ学童野球に関する本が大石氏の著書「野球の教え方、教えます!」であったからだ。この本では子供たちが楽しみながら野球の基本を身に付けられる練習方法が様々な角度から紹介されており、今でも読み返すことが度々ある。講習の中でも大石氏の野球を好きになってもらいたい、という強い気持ちを感じることができた。講習後、私が声をかけた際にも気さくに対応して頂き、感謝している。
自チームでは幼稚園生、小学生低学年の子供が多く在籍している。今回の講習で教えて頂いたボールゲームを小さい子の練習に取り入れ、まずは野球の楽しさを知ってもらいたいと考えている。
私自身、高校時代に痛めた肩が今でも痛むことがあり、全力投球が怖い。今回の講師を務めてくださった吉田氏も高校時代に肘を壊し、甲子園のベンチ入りメンバーに選ばれたものの全力投球できない棒球をライトスタンドに運ばれた動画を流していた。
学童野球において、怪我で大好きな野球をできなくなる、または全力プレイできずにつらい結果となることは我々大人の責任であると考える。自チームでは痛いところがある場合、基本的に子供たちから申告させるようになっている。ただ、講習を受講し、そうではなく大人が子供たちの何気ない仕草を見逃さず、定期的に肩肘をチェックすることが必要だと考えるようになった。怪我の予防、早期発見が可能となるよう自チームを変えていきたい。
悪しき伝統を根絶
今回の講習において、まず見直すべき点として感じたことは講習のカリキュラムでもあった体罰・暴力・ハラスメントの根絶である。
ほとんどの講師の方も小中高では暴力、暴言の中で野球を行ってきた、と仰っていた。私の中学高校の野球部も同じような環境であった。特に高校時代、有望な野手、130キロを超える速球を投げる投手であった同級生たちが監督についていけないから辞める、と言ったあの時を20年以上経った今でも忘れることはできない。
野球自体を嫌いになって辞めていった子供たちは少なく、ほとんどが野球に付随する様々なことが原因で辞めていっていると考えている。その最たるものが体罰・暴力・ハラスメントである。今後、このような子供たちを少しでも減らすため、自チームでは以下のことに取り組んでいきたい。
・子供に対する暴力、罵声、威圧的態度は慎む
・身体的、性格的部分を責めるような言動は慎む
・プレイ結果を責めることはせず、失敗を歓迎する
・子供たちが自分たちで考えて行動できるよう指導する
・両親、地域の方々に感謝の気持ちを持てるような指導を行う
・ただし、怠慢プレイ、仲間を虐めるような言動、危険な行為については厳しい姿勢で「叱る」
まず指導者が変わろう
今回の講習では私よりも高齢であろう参加者が必死にメモを取り、自分より一回り以上年下であろう講師に何度も質問をしていた。その姿を見て、私も自チームも子供たちのために変わらなければならない、と強く感じた。
子供たちには我々の時代が良しとしてきた暴力、暴言、精神論の野球ではなく、野球を大好きになってもらい、プレイヤーとしてはどこかで終わったとしても彼らの人生の一部に野球が存在する、そのような子供たちを1人でも多く育てたいと考えている。私自身、このようなことを語れるほどまだ言動が伴っていない。それでも子供たちのために変わっていきたい。
最後に、このような機会を与えてくださった野球連盟の方々、講師の方々に厚く御礼申し上げたい。
コーチF(元神奈川県立高エース)